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あんしゃんぶるしゅたーず!

あんさんぶるスターズ!という物語の主人公

※この記事にはアニメ・ゲームともに多大なネタバレを含み、かつ個人の勝手な意見や主張、思い込みと願望がねじ込まれています。

 

改めてアニメ あんさんぶるスターズ!放送開始とともにメインストーリーを読み返したりしているんだけど本当に物語の主役の立て方、語らせ方が面白いなあと思う。

メインストーリーは夢ノ咲学院にプロデューサーとして転校してきた転校生(※アニメ版ではあんず)が物語の聞き手……あるいはキーパーソンとなって話が進む。

メインストーリーの主役は転校生ではなく、あくまでも主役は氷鷹北斗をリーダーとするTrickstar(明星スバル、遊木真、衣更真緒)の面々である。

 よって右も左もわからぬ転校生であるプレイヤーは必然的に自分の存在を求め、希望を抱き、打倒・生徒会という目標を掲げ、Trickstarという革命の物語の主人公と共に夢ノ咲学院で過ごしていくこととなる。

夢ノ咲学院の悲惨な状況ははじめに北斗によって語られる。学院は調教された、人の心がないみたいな―「優秀なアイドル」が優遇され、己らのようなはみ出し者は淘汰され、輝く機会すら与えられない。自分たちはそんな学院を変えたい。そのためには自分たちを導いてくれる女神……転校生が必要だ、と。

ちなみにこのとき転校生は気絶して保健室で寝ており、北斗は寝ている転校生に向け切々と語っていく。このあたりも上手いなあと思う。物語序盤でスバルや真のアホコンビに囲まれ、どこかおすまし顔で過ごしていた北斗の隠れた熱い一面を知るのだ。

メインストーリーでは様々な生徒と出会い、生徒会の『被害者』と出会っていく。

龍王戦での鉄虎や晃牙は生徒会の横暴さを訴え、極めつけはRa*bitsのライブだ。

あんなに可哀想なシーンがあってたまるか、と憤りを覚えるほど残酷極まりないシーンである。そこからは転校生(プレイヤー)自身もこの悲しい現実に打ちのめされ、Trickstarを支え革命を成功させるべく奔走していくことになる。

メインストーリーの内容はこれ以上は割合するが、結果的に様々な困難を乗り越え、Trickstarの革命は成功する。

これで、めでたし、めでたし……。

で終わっていたらよかったのにと思えるほど後に続くサブストーリーが秀逸なのだ。

 

あんさんぶるスターズ!においては11ものユニットとそれに在籍するアイドル達がいる。メインストーリーはTrickstarが物語の主人公だが、他のストーリーにおいては他のユニットが主人公になっているのだ。そのサブストーリーを読み解いていくと、メインストーリーにおいて『どうしてこうなったのか』『どうしてこういう行動を取ったのか』が徐々に解き明かされていく。

 

別記事でも書いたように、あんさんぶるスターズ!は究極の後付けストーリーだと思う。当然今日のアプリゲーム事情から見て、見切り発車……というか細部の設定があやふやなままメインストーリーを書いていったのは明確だ。そもそもこうして四周年を迎えるまでゲームが続いている事態が想定外なのだろう。確実に後付けの設定のはずなのに、その設定の結びつけが上手い。隠された歴史、もしくは主人公、語り手の変更による視点の変更で一つの出来事が多角的に繰り広げられていくのだ。

 

例えば、メインストーリーにおいて真は瀬名泉によって監禁されるわけだけども、Trickstarや転校生から見ると正直泉はただのヤバい人である。ただよく話を読み込むと、この時点でKnightsの他のメンバー(朱桜司を除く)は瀬名泉に対して幾ばか同情的なのである。その時点で多少の違和感を抱えつつも物語は進む。

そして月永レオの登場、イベントストーリー、モノクロのチェックメイト

ここで泉とレオの間に何が起きたか、ゆくゆく権力を握る生徒会(天祥院英智)に歯向かうとどうなるのか……泉は痛いほど知ることになる。

その一連の過程を傍観者として見ていたKnightsのメンバー、鳴上嵐と朔間凛月が泉に対して同情的になるのも無理はない。

泉はただ過去と同じ間違いを繰り返したくないだけで、大切な人を傷つけたくないからこそ、メインストーリーで真を監禁するに至ったのだ。(そのやり方が正しいか否かは別として)

モノクロのチェックメイトにおける物語の主人公は月永レオでもなく、天祥院英智でもなく、瀬名泉だと私は思う。

 

モノクロのチェックメイト始めイベントストーリーの追憶編では、現在の3年生の過去の話が語られる。そこで英智により夢ノ咲学院が『革命』されていく様子が描かれるのだ。

この英智の『革命』に当たって肝なのは、メインストーリーの主役であるTrickstarのメンバー達が己らがはみ出し者であり、浮いている存在故にこの『革命』において何の役割も与えられていないことだ。(終盤に唯一北斗だけが革命の一端を体験することになるのだが、その熾烈な体験が北斗の、Trickstarの革命への着火点になっていく)

何の役割も与えられていないので、当然英智が夢ノ咲学院に何をしたのか知ることも無く、なぜ今の仕組みができたのかも理解しておらず、英智の『革命』によって与えられた恩恵は学院のはみ出し者のTrickstarのメンバー達にとっては全くの無意味で無価値なものでしかなく、英智の「革命の物語」にとっては名前もない脇役でしかないのだ。

 

そして、Trickstarは英智の物語の脇役であるからこそ、革命を成し遂げられる。

何も知らない1年生は兎も角、Trickstar以外の他の2年生達は自ら、もしくは己が慕う人間が英智の革命で傷つくのを目にしているので英智を嫌う人間も多いが、同時にその力を恐れてもいる。だが、大半の3年生は英智のやり方に異議はあれども、英智が何を成し遂げたのか知っているのだ。だから例え英智によって傷つけられたとしても、英智を憎んではいないしむしろ感謝している面さえある。(斎宮宗を除く)

英智の革命によってもたらされた恩恵……腐りきった過去の夢ノ咲からの脱出……を受けているからだ。

自分達が1年生の頃の学院に戻った方がいい、と思う3年生はほとんどいないだろう。

Trickstar以外の2年生は過去のことは知らず、英智が革命を始めてからの様子しか知らないので生徒会が謳歌する今の状況を歯がゆく思うのは当然だが、先輩がどこか納得した様子なので違和感を感じつつも日常を過ごしていくのだ。

その点Trickstarは同学年だけのユニットである。先輩もおらず、革命時には恐らくユニットを結成していなかったであろうと見て取れる。

英智のやり遂げたことを知らないからこそ、過去の夢ノ咲学院が酷い状況だと知らないからこそ、傷ついた先輩を見てないからこそ、主人公でなく脇役だからこそ……全て壊して革命を起こそう!という発想に至るのだ。

 

サブストーリーでは他にもさまざまなことが明らかになっていく。夢ノ咲学院に何が起きていたか、アイドル業界に何が起きていたか、そのとき誰がどう感じたか、何が自分の身に、あるいは誰かの身に起こっていたのか。

これは主にひとりの人物によって語られ、その物語を紡いでいる人物の主観が混じることになる。

基本的に夢ノ咲学院のアイドル達が嘘をついていることは無いのだが、転校生(プレイヤー)は、その語り手の紡ぐストーリーしか受け取ることができない。

もしメインストーリーで転校生が最初に出会ったのがTrickstarの誰かではなかったら?転校したのが違うクラスだったなら?生徒会のメンバーに学校を案内されていたならば?もしくは転校してきたのがあと一年早かったなら?

もしくは、主人公が天祥院英智だったなら?

例え同じストーリーが繰り広げられたとしても、物語の主人公を誰に据えるかによって全て異なるストーリーになっていくのだ。

 

また、ゲーム内でこれは上手いと思ったのプレイヤーの変更だ。序盤は転校生がプレイヤーとなるのだが、あるイベントから急に「転校生ではなく他の誰か」目線でのストーリーが始まったのである。(確か最初に紫之創目線でのストーリーが始まったはずだ)  プレイヤーの変更により、よりストーリーに深みが加わった。

 

他にも意図的に嘘をついている三毛縞斑の存在や、情報操作しようとするコズミックプロダクションの存在、数多くのキャラがする曖昧な物言いが物語をより複雑に、面白くしていく。

誰かにとっての正義は誰かにとっての悪で、一見悪に見えることも結果的には正義に結びつくことになることもある。

長期的な目線で見るか、短期的な目線で見るか。これもキャラクターによって変わってくる。(顕著なのはやはり英智だろう。英智においてはまず自分が、というより自分が死んだあとのアイドル界が、という事が念頭にくるのだろう。アイドルという存在を愛しているからこそ)

 

アニメではメインストーリーから始まるだろうし、Trickstarと共にあんずがアイドル界に足を踏み出し、革命を成し遂げていくのを目の当たりにするだろう。アニメでどこまでのお話をやるかは不明だが、このアニメから入った人たちがメインストーリーだけではなく、他の主人公たちが紡いだ物語を読む日を来ることを願う。